story73.登録有形文化財の役割を再確認

昨年の大きな出来事として、母屋と土蔵が国の登録有形文化財になったことも挙げられます。また、登録に至るまでには、たくさんの専門家の方々のご協力や助言がありました。初めて我が家を藤井厚二建築として認識し文化財登録を勧めてくださった京都工芸繊維大学の笠原先生、最近毎年のように学生の卒業研究として我が家の建物や家具の測量をされている京都女子大学の片山先生など、専門家の多くは大学の先生でした。そして、登録有形文化財の保全・活用などの学術論文を調べていたら、大阪市立大学の徳尾野先生という方が、そのような研究をされていることを知りました。徳尾野先生が執筆された論文として、日本建築学会技術報告集第25巻第60号(2019年6月)「個人所有の登録有形文化財住宅の公開・活用の意義と保全に向けた可能性に関する研究」があり、その一部を紹介します。

----------------------

現在、多くの登文住宅では独自に公開・活用を実践している。これらの登文住宅間で連携が進めば、中期開催事例において開発された多彩な活用内容・空間の設え方および運営ノウハウ、支援者・支援団体の情報、および収益事例における事業情報などが共有される。このような登文住宅の使いこなし技術といえる情報は、運営負担の分散や公開・活用の内容充実に寄与し得る。専門家・ボランティアなどの支援者・支援団体との関係を築く契機となり、かつ登文住宅に関心を持つ来訪者を引き付ける公開・活用は、登文住宅の保全活動に対する支援者を掘り起こすことにつながる可能性もある。登文住宅の使いこなし技術が公開・活用に留まらず、保全活動をも組み込むよう展開すると、私的財産でありながらも所有者・支援者・来訪者の協働により次世代への継承に繋がっていく。

----------------------

学術論文で難しい表現となっていますが、アンケート調査などの結果より、登録文化財住宅については、所有者同士の横の連携を取りながら、専門家や支援団体などのサポーターの方々や、イベントなどに参加いただいている来訪者の方々と一緒に守っていくことの重要性が述べられているようです。

文化財保護法の中では、文化財の役割として「国民的財産」という言葉が使われています。皆さんのご愛顧や、専門家の方からのご協力もいただきながら、我々自身も家をいたわり、隅々まで利用するような形で、できる限り生き生きと残していけるよう努めたいと思います。

Katsuji

0コメント

  • 1000 / 1000