story66.登録有形文化財の証書が届いて

昨年11月、我が家の母屋と土蔵が国の登録有形文化財になるとの答申がなされ、今年の4月、正式に決定しました。そして先日、登録有形文化財の登録証が家に届き、早速階段室に飾りました。家にこのような証書があると、一段、格が上がったような感じとなり、嬉しい気持ちとともに、身が引き締まる気持ちにもなります。登録されるにあたっていろんな方々の協力をいただきましたが、どのような部分が登録有形文化財になる要素であったのかを、関連資料を紐解いて、今一度、見直してみました。

住宅遺産トラスト関西の方々に多大な協力をいただいた文化財申請資料の中では、以下のような項目が、我が家の主な特徴と示されています。

・外壁は1階、2階とも真壁造りの漆喰仕上げ、腰部は杉の縦板張りである。窓は木製の格子付硝子窓で、妻面の窓には銅板葺の小庇がつく。硝子の押縁は全て外押縁となっており、屋内空間を重視した藤井厚二の設計思想をこのようなところにも読み取ることができる。各室の天井は主に竿縁天井または組天井とされており、竿縁は米松材と米杉材が使われ、形状は大面取りの平縁となっている。床材は柾目の松材だが、ピアノやバイオリンなどに使われるテシオマツ(赤蝦夷松)が使われていると思われる。居間は板敷きを基本とする洋間だが、東側に床の間と地袋を構え、天井を一部網代天井とし、和洋折衷の室内意匠になっている。玄関ホールや廊下と畳間の間には40センチほどの段差が設けられており、イス座とユカ座の共存を図ろうとする藤井独特の和洋折衷の手法がここにも見られる。

・永井家住宅主屋は室内の空間構成に大きな変更はなく、建築部材の多くが当初のまま維持されている。和風を基調としつつも、室内は和式と様式の生活様式を組み合わせた特色のある空間構成をしており、平面計画は採光や動線などの機能性に配慮されている。いずれの特徴も藤井厚二が好んだ住宅設計手法で、彼の設計した住宅の系譜に連なるものといえよう。一方、住宅の中心に階段室を配置し、2階連続窓から光を取り入れることで、玄関ホールを印象的に演出した例は他にみられず、大変貴重である。以上を総合し、永井家住宅主屋は「造形の規範になっているもの」として、国登録有形文化財に相応しい建造物と考えることができる。

また、平行して実測など調査研究をしてくださった京都女子大学片山先生が、このほど都市計画学会に提出された学術論文の中では、以下のような項目も挙げられています。

・書簡において、給水は井戸水と池水で計画し、外壁は風雨を考慮して漆喰壁を勧め、環境に良い電気暖房を勧めている。施主からの変更依頼への対応では、例えば、老人室の床の段差を無くしたい施主に対して、窓の高さとの関係であまり下げられないことを説明している。

・床の間のある客間、明るい階段室、内開き扉の玄関、小上がりの和室、ベランダ、導気筒の設置など、藤井の特徴が随所に見られる貴重な作品である。

細かな部分については、生活している中で実感として気付きにくい部分ですが、藤井厚二の設計思想が随所に組み込まれていることや、大きな改修が行われていないこと、施主の要望を受け止めつつ提案をしていること、今後の造形の模範になることなどが挙げられており、このような特徴を大切に受け止め、今後もできるだけ残していけるようにと、改めて認識しなおした次第です。

Katsuji

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